ターゲットを絞る

どうして集客や販売促進を考えるとき、ターゲットを絞ったほうがよいと言われるのか

年に数回、チラシの作り方講座の講師をさせていただく機会があります。
講座内で「自分の提供することで役に立つことができるターゲット像を絞ってみましょう」とお伝えするのですが、時々「みんなに使ってほしい。ターゲットを絞るのは不安」という声をいただきます。

自分の商品やサービスが幅広い層に評価されるのは理想ですが、初めからそれができることはなかなかありません。

一度、チラシやwebサイトを作るとき・SNSで情報発信するときなどに、理想のお客様を具体的に設定してみてください。
その人が、どのような生活スタイルで、どのような悩みを抱え、どのような欲求があるかを想像したり、実際にアンケートでリサーチしたりします。
やってみると、意外と「あれ、自分のサービスを使う機会がほとんどない人を想定していた」とか、「この時間、このタイミング、この媒体の情報は見ていないかも」ということに気づくことがあります。

理想のお客様が設定できたら、「わたしのサービスであなたの役に立つことができます」「こんなお悩みありますよね」「こんな未来も夢ではないかもしれません」など、気持ちに共感しながら、具体的なキーワードを入れた情報発信を心がけると、「わかりやすさ・伝わりやすさ」が増すと考えています。
結果、自分の商品やサービスのファンになってくれる人に好意的に情報を受け取っていただけると、自然とクチコミなどで情報が拡散されていきます。

「お客様視点」を忘れないためにも

よし、チラシを作るぞ、と思うと、「いかに良いことを書いてたくさん宣伝して売るか」といった「売る側視点」に偏ってしまうことがあります。
ですから、何かを売ろうとするときこそ「お客様の視点」を忘れてはいないか、問い直す必要があります。
その「お客様視点」を取り戻すために、理想のお客様を設定します。

自分も事業を離れたら一消費者です。
日々、何かをすすめられ、選択し、決断しています。
そう考えてみると、人が生活必需品以外で、なおかつ自分にメリットがあるかどうかよくわからないものにお金を出すのは、かなりハードルが高いと気付くことができます。

でもやっぱり、ターゲットを絞る=可能性をせばめるのでは?

先日、今後の方向性に悩んでいる、とおっしゃる方とお話する機会がありました。
どこに行ってもターゲットを絞りなさいと言われるけど、なんとなく不安を感じるとのことでした。

わたし個人としては、「ターゲットを絞る」ことが「それ以外のお客様を切り捨てる」ことにはならない、と考えています。

ルイヴィトンのバッグ

思い返すと、わたしが高校生の頃は女子高生がブランド物の財布やカバンを持ち出した時代でした。
しかし、超高級ブランド会社は、女子高生をターゲットに商品をデザインし販売していないと思います。

その女子高生たちはきっと、その商品を身に付けたモデルさんへの憧れや、ブランドの掲げる価値観に背伸びをして追いつきたくて、身につけていたのでしょう。

ブランドには筋の通った理念があり、この商品・サービスを利用することでどうなることができるかを明確に伝えようとしています。それに共感したり憧れたりする人々が利用して、それに憧れる人が生まれ、未来の顧客が広がっていくとわたしは考えました。

誰にでも平均的に好まれるものを売らない、という選択

ある番組で、落合陽一さんがおっしゃっていた言葉にとても共感しました。

「最初対象の人はエクストリームユーザーって僕結構重要だと思っていて。世界に一人か二人かもしくは十人ぐらいしかいないけれど、彼が必要な物っていうのが、社会にとってやがて必要になるものである人っていうのはいるんですよ」

そしてそんなものこそかっこよくおしゃれにしたいよね、というようなお話でした。

デザイン作業

誰にでもなんでも安くたくさん売ります、の役割を持った企業ももちろん必要です。
しかしながら、特に小さな事業や個人事業を営む者にとって、誰にでもなんでも安く買ってもらえる多くの在庫を抱えることは不可能です。

物が溢れかえった今だからこそ、狭い世界で突き詰めていくかっこよさを感じた言葉でした。